menu

非侵襲脳機能イメージング研究グループ(PI: 大石 直也)

背景・目的

精神障害は、精神や行動における特定の症状を呈することによって、機能的な障害を伴っている状態である。精神障害には、発達上の問題や統合失調症、うつ病や双極性障害といった気分障害や、パニック障害といった不安障害、性同一性障害、また薬物依存症といった物質関連障害など様々なものがある。

精神障害は、世界保健機関 (WHO) による国際的な疾患分類の『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版(ICD-10)における「精神および行動の障害」や、アメリカ精神医学会による『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM-5)において、網羅的に分類されている。精神障害を診断するための合意された生物学的指標(検査)は存在しないため、これらの分類の基準となるのは症状の組み合わせである。しかし、これらの定義上、ある精神障害を他の精神障害と区別するための明確な境界線がないため、例えば統合失調症と健常者を比較するといった精神障害の分類を核とした臨床研究を行う際に、この分類の困難さ、曖昧さに起因した結果の一貫性欠如といった問題が生じうる。

現在の精神疾患の治療は、主として症状に対する対症療法である。例えば、薬物療法において、統合失調症における妄想に対する抗精神病薬、抑うつ症状に対する抗うつ薬、不眠に対する睡眠導入薬、などが挙げられる。これらの治療を推進するにあたり、あるいは新規薬剤の開発にあたり、これらの症状を核とした病態解明が適切な治療方針決定のためにも望まれる。

近年、核磁気共鳴画像(MRI)装置や解析技術の進歩により、ヒトや動物における脳内の各要素間の結合状態(構造的結合、機能的結合)や相関(脳容積変化)を、MRIにより非侵襲的かつ詳細に評価することが可能となってきた(脳MRIコネクトーム)。代表的には、拡散テンソル画像(DTI)を用いた構造的コネクトームや、安静時機能的MRI(rs-fMRI)を用いた機能的コネクトームがあげられる。この技術は、構造的・機能的なネットワーク状態を全脳レベルで網羅的に解析できるため、従来の手法では十分な知見が得られなかった精神疾患など複雑な病態の解明への応用が期待されている。

 

 

 

MRIの大きな利点として、非侵襲的であることだけでなく、ヒトから齧歯類まで幅広い種において評価が可能であることがあげられる。例えば、rs-fMRIを用いた研究により、デフォルトモードネットワークと呼ばれるネットワークが、齧歯類やサル、ヒトにおいて同様に認められることが見出された(Vincent et al. Nature. 2007; Lu et al. PNAS. 2012)。さらに、近年特にマウスで発展が著しい光遺伝学(optogenetics)やDREADD(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drug)といった革命的な技術をfMRIに応用することで、fMRIで得られた知見と詳細な分子基盤を結びつけることも可能になってきた。このように、MRIは神経ネットワークを介したトランスレーショナル研究において極めて重要な技術となりうる。

一方、コネクトームに代表される網羅的ネットワーク解析では、取り扱う情報量が飛躍的に膨大するため、有用な情報を取得するためには効果的な情報抽出(データマイニング、バイオマーカー探索)技術が不可欠である。グラフ理論を通じた解釈性の高い情報抽出技術だけでなく、近年、深層学習(ディーブラーニング)に代表される機械学習・人工知能的アプローチの飛躍的な進展により、ビッグデータからの効果的な情報抽出が期待される。

 

 機械学習により、MRIの特徴から統合失調症を層別化する技術
(Sugihara G, Oishi N, et al. Schizophr Bull. 2017、より引用)

我々の研究グループでは、ヒトから齧歯類まで同じ手法で評価可能な非侵襲脳機能イメージング技術であるMRIを基盤とし、近年飛躍的な技術革新を遂げているネットワーク解析および人工知能・機械学習技術を融合させることで、精神疾患における症状ベースの病態解明を目指す。

研究内容

  1. 精神疾患における症状ベースの病態解明
  2. MRI画像解析手法の開発
  3. 非臨床研究との強固な研究推進

プロジェクト終了時の目標

  1. 精神疾患の各症状に関連した神経ネットワークの解明
  2. 各症状の程度を推定する画像バイオマーカーの同定

メンバー

役職/所属 >氏名
特定准教授 (PI) 大石 直也
特定助教 生方 志浦
看護技術補佐員 篠田 悦子
技術補佐員 野中 綾